【SDGs】地球環境と人に優しい紙!今話題の「バナナペーパー」について解説(前編)
はじめに
突然ですが、みなさんバナナは好きですか?
バナナといえば遠足の時、「先生!バナナはおやつに入りますか?」で有名ですよね。
それはさておき、この普通にスーパーで売ってあるバナナ、縁日で大人気のチョコバナナに使われるバナナ、野菜や牛乳とミキサーにかけてスムージーにすると美味しいバナナですが、このバナナから紙を作ることができるのを知っていますでしょうか?意外と知らない方が多いのではないかと思います。
バナナから作った紙・・その名もズバリ!『バナナペーパー』というのですが、実はこのバナナペーパー、今あちこちで耳にする『SDGs』に対応する、地球の環境を救う(かもしれない)素晴らしい紙なのです。
今回は、バナナペーパーが一体どういうものなのか、どういう風に作られているのか、SDGsとの関係性などについて解説していきたいと思います。
従来の紙(木材紙)と地球環境をめぐる問題
日本は紙の生産&消費大国
まず、私たちが普段使っている、紙のことから軽く触れていきましょう。日本での紙の生産量は、中国とアメリカについで世界でも第3位といわれ、国民一人当たりの紙の消費量も、年間201kgと世界の平均である56kgを遥かに上回ります。
紙の生産量世界1位の中国は、生産量でこそ2位のアメリカとは大差で世界一になっているのですが、国民一人当たりの消費量は約80kg。日本と比較して半分以下となっています。つまり、日本は「紙の生産・消費大国」であるということになります。
確かに、私たちの暮らしの中では様々な紙と紙製品を欠かすことはできません。紙は一度生産され、使用されたもの(古紙)をリサイクルし、再利用しています。日本は紙のリサイクルには比較的積極的で、早くから古紙の回収、再利用に取り組んでおり、古紙回収率・古紙利用率ともに世界トップクラスにあります。
しかしながら、古紙も繰り返しリサイクルするうちに繊維の劣化などが起きてしまい、永遠にリサイクルし続けることはできません。
紙の原料「バージンパルプ」をめぐる問題
紙の原料の大元は『バージンパルプ』も呼ばれる木の原料です。日本で生産される紙の原料となるバージンパルプの大半は、海外の森林資源に依存しています。さらに原料ではなく紙製品として海外から輸入されるものも多くあります。
昨今は世界的な法による規制の強化の動きや、製紙関連企業による業界全体の取り組みを受けて、サステナビリティ(持続可能性)に配慮した森林の管理が拡大している一方で、バージンパルプの原料となる木材の確保のため、プランテーション(大規模植林地)は造成され続け、「社会的問題」と「環境的問題」の2つの問題が起きている地域が未だにあるのも現実です。詳細を書くと、それだけで2~3記事くらいのボリュームになるので、興味のある方は是非調べてみていただきたいと思います。
木を原料としない紙「非木材紙」
非木材紙とは
前述のように、紙の原料となる木材資源をめぐる問題などから、現在では原料に木材を使わない「非木材紙」が、再生紙と並んで、森林資源保護の有効な手段として期待されています。
もちろん、今回ご紹介するバナナペーパーも非木材紙のなかの一つ、ということになります。
非木材紙の原料は?
非木材紙の原料には様々な種類があります。代表的なものは「ケナフ」と「バガス」です。
【ケナフ】
ケナフは東南アジアやアフリカなどの地域に生育する植物です。ケナフの特徴として、成長が早く半年程度で収穫できることから、製紙原料としての安定供給が可能な原料として期待されている植物です。
【バガス】
バガスは砂糖を作るためにサトウキビを搾った後の搾りかすです。サトウキビの主な生育地はアジアや南米ですが、これまで糖汁を搾った後のかすは繊維の堅い部分は廃棄されていました。
このバガスは年ごとに収穫されるため、サトウキビから糖汁を搾る場所から近いところに製紙工場があれば、運送コストもかからず、効率的紙を作ることができます。木材のパルプより短時間か
他にも非木材紙の原料として、竹や葦、エスパルト、海藻などの「天然植物繊維」や、パームやし、稲、麦わらなどの「農産廃棄繊維」、先に紹介したアバカやコットン、楮(コウゾ)などの「栽培植物繊維」などがあります。先に紹介したケナフは栽培植物繊維、バガスとバナナは農産廃棄繊維に属します。
バナナペーパーについて
さて、本題に進みましょう。今回の主役であるバナナペーパーは、もちろん「非木材紙」の仲間です。もう少し詳しく書くと、バナナペーパーはバナナの茎の繊維に、古紙やパルプを混ぜ合わせてつくられた紙です。バナナペーパーがはじめに作られたのは我らが国、日本。福井県に伝わる伝統的な「越前和紙」の手すきの技術を応用して作られました。
バナナペーパーの原料になるバナナですが、バナナの果実は1本の茎からたった1回だけしか実らないのです。ですので、果実を収穫したら、次の茎に栄養が渡るようにするため、実がなった後の古い茎を切り落とします。今までは廃棄物として扱われていた古い茎を、紙の原料として有効活用できる、実にすばらしい考えです。
バナナペーパーは日本では「ワンプラネットペーパー」という名前で流通しており、バナナペーパーの開発元である「ワンプラネット・ペーパー協議会」には国内の製紙メーカーや印刷会社が会員として参加しています。
バナナペーパーはどうやって作られている?
バナナペーパーの原料は、アフリカ南部の「ザンビア共和国」の中の小さな村で作られています。
農薬栽培や児童労働をしていないなど、栽培の条件をクリアしている契約農家が、オーガニックなバナナを栽培し、収穫したあとの茎を工場に集め、村の人たちの手で繊維状にします。
その原料が日本に運ばれ、リサイクルされた古紙やパルプと混ぜ合わせます。均一の厚さに揃えてカットすると、バナナペーパーの完成です。
印刷用紙としてのバナナペーパーの特徴
バナナペーパーは一般的な用紙(コート紙や上質紙)にはない個性的な特徴があります。ここでは印刷用紙としてのバナナペーパーの特徴をご紹介します。
バナナペーパーの特徴
まずバナナペーパーは、紙の表面の全体に粒々の模様が広がっています。もちろん、紙表面の粒々の模様は紙ごとに一枚一枚違いますので、ざまざまな表情を見せてくれます。これが一番わかりやすい見た目の特徴です。紙の手触りは、バナナの茎と古紙がミックスされたことによる、少しザラっとした繊維の質感があります。また、光の当たり方によっては白い繊維がキラキラと光ったりもします。色は真っ白ではなく、クリーム色系の色、薄い黄色と薄い茶色の中間といったかんじでしょうか。
バナナペーパーの紙厚は約0.24mmほどあり、紙自体にしっかりしたコシがあります。バナナペーパーは一応表裏があり、表面がツルツルしている方が表、和紙の様にザラザラした感触がする方が裏です。
印刷時の特徴としては、バナナペーパーはインクの乗りが良い部類の紙になります。特に黒色は用紙に映えます。バナナペーパーの風合いはまさに独特で、越前和紙の作り方をもとに開発されただけあってか、和紙のような風合いが高級感を演出してくれます。色味も手伝って優しく落ち着きがあり、温かみを感じることもできます。白地の名刺に比べ、ふんわりとした温かみとさりげない上品さ、味のある仕上がりになります。
今回のまとめ
今回は、今話題のSDGsに対応するバナナペーパー についての解説の前編でした。バナナペーパーは独特の風合いもあり、神そのものの性質としてもなかなか面白い用紙です。残念ながら現状の普及率はまだまだ高いとは言えませんが、これから世の中のあちこちでバナナペーパー で作られた製品を目にすることも少なくなくなるのではないかと思います。次回はバナナペーパーとSDGsの関係性について草しく触れていきたいと思います。