【印刷の基礎知識】印刷物の用途や目的で使い分けよう!
印刷物の『綴じ方』について徹底解説

はじめに

私たちが普段手にする雑誌類やパンフレットなどは冊子になっていることが多いのですが、元々はそれぞれのページはバラバラに印刷されたものです。そのバラバラに印刷されたページをまとめて冊子にすることを「製本」といいます。製本にもその方法によっていろいろな種類があります。今回は、印刷物の製本の方法『綴じ方』について詳しく解説していきます。

製本の方法(綴じ方)の種類は大きく分けて3種類ある

前述の通り、製本とは印刷物を冊子の形になるように綴じることをいいます。製本の方法には種類があり、「どのような冊子を作りたいか」によって適した製本方法を選びます。主な製本方法には3種類あり、【針金綴じ】・【糸綴じ】・【無線綴じ】に大きく分けることができます。

針金を使って冊子にするポピュラーな【針金綴じ】

【針金綴じ】は折られた印刷物を針金で綴じる方法です。針金綴じには【中綴じ】・【平綴じ】などいくつか種類がありますが、今回は主な綴じ方である中綴じと平綴じをご紹介します。

1:中綴じ(なかとじ)

中綴じは折り目をつけた見開きのページの真ん中を、針金で留めて仕上げる綴じ方です。中綴じはページを真ん中から180度開くことができるのが大きな特徴です。また、都地方としては非常にポピュラーで、加工自体も簡単なことから、加工にかかるコストを抑えることができます。

中綴じは見開き状態の紙を重ね、重ねた紙の中央部分を針金などででまとめて綴じます。この場合、紙1枚がページの左右と表裏で合計4ページになります。ですので、中綴じの冊子類のページ数は必ず『4の倍数』になります。

中綴じにすることによる最大のメリットは、中央部分で紙を綴じ合わせるため、針金で留めたギリギリのところまでページを開くことができる点でしょう。左右(上下)のページを大きく使えるため、写真を見開きいっぱいに載せたりなど、自由度の高い印刷物を作りたい時などにおすすめの綴じ方です。また中綴じはコスト面にも優れているもの大きな特徴で、特に印刷部数が多い冊子物などに最適な綴じ方です。

反面、綴じ方の仕様上強度が低めなのがデメリットとなります。特に、繰り返し読むような冊子の場合ですと、使っているうちに綴じていたページが取れてしまう可能性があります。ある程度の強度が求めれるような冊子類は、他の綴じ方を選択した方がいい場合もあります。

また、印刷の用紙の厚さなどによっても左右されますが、中綴じは綴じられる総ページ数に限界があります。一般的な紙厚の場合で、最大80ページ程度が限界でしょう。そのため、中綴じはページ数が比較的少ない冊子の方が適しています。

2:平綴じ(ひらとじ)

平綴じは折った紙の背の部分から数センチメートル程度余白を持たせた所を、針金で数か所留める綴じ方です。紙を留めた針金が隠れるように、表紙部分を巻き込む場合と、針金が見えたままの状態で仕上げる場合があります。

中綴じが背の「中心部分」を針金で留めるのに対して、平綴じは背の近くにある「側面」を留めるのが特徴です。針金が隠れるように表紙部分を巻き込んで仕上げる場合と、針金が見えたままの状態で仕上げる場合があり、用途や仕上がり方の要望に合わせて選択します。

平綴じは中綴じよりも丈夫な冊子にすることができる点がメリットです。その反面、側面を針金で留めている構造上、センター部分いっぱいまで冊子を開くことができず、用紙全面をページとして使うことができないのがデメリットになります。

平綴じは、プレゼン資料や契約書、伝票、取扱説明書などの冊子類によく用いられる綴じ方です。

糸で綴じる歴史ある伝統的な製本の方法【糸綴じ】

1:糸綴じ(いととじ)

別の冊子の綴じ方として、糸で紙を綴じる【糸綴じ】があります。糸綴じは「糸かがり製本」とも呼ばれ、日本では平安時代の頃より書物の製本に使われており、歴史感のある伝統的な製本の方法です。現代では辞書・辞典のような分厚い書籍を作成する時などに、この綴じ方がよく使われます。

具体的な糸綴じの方法は、重ねたページの束を糸でかがってつなぎ合わせ、接着剤で固めます。糸綴じは製本強度の高さが大きな特徴で、ページを180度開くことができるうえに、繰り返しのページ開閉に対する強度も非常に高いのがメリットです。

また保存性に優れ、長期的な保存・使用するものに適しているため、辞典などの厚みのある冊子に使われることの多い綴じ方です。また針金を使用していないので、針金による怪我の恐れもありません。デメリットをとしては、綴じるのに手間がかかるため、製本コストが高い点でしょう。

高級感のある針金や糸を使わない綴じ方【無線綴じ】

1:無線綴じ(むせんとじ)

次に【無線綴じ】をご紹介します。無線綴じとは、いくつかのページを折った「折り丁」を重ね、背の部分に糊をつけて接着する綴じ方です。冊子物の綴じ方としては、中綴じの次にポピュラーといって良いでしょう。

無線綴じは比較的ページ数の多いパンフレット、カタログ類や雑誌などでよく見られます。無線綴じは物理的に背に糊が付けば、ページ数が100ページを超えるような冊子でも綴じることができます。また、中綴じはページ数が4の倍数の単位でしか綴じることができませんが、かたや無線綴じは2・4・8・16ページ単位で製本することができます。

無線綴じは背の部分が表紙に対して直角に折られます。フラットな長方形のような仕上がりになるため、品の良いしっかりした仕上がりになるのが魅力です。中綴じの場合はページ数が多くなると冊子が膨れてしまうことがありますが、無線綴じはほぼフラットに仕上がるため、印刷物としてのクオリティの高さを演出することもできます。

無線綴じのデメリットとして、綴じる際に接着剤を使って製本しているため、高温下では接着剤が柔らかくなることで綴じが崩れることがあります。温度変化ではなく経年変化で接着剤の部分が劣化してしまうこともあります。

また、無線綴じは接着面としての背が必要となりますので、本文のページ数が少ない冊子や、本文の紙の厚さが薄い冊子などだと、背の幅が狭くなり、背に付けられる接着剤の量が少なくなってしまいます。この場合、綴じる力が小さくなり、背と本文が外れやすくなることがあります。

2:あじろ綴じ(あじろとじ)

【あじろ綴じ】は、無線綴じの派生系の綴じ方です。通常の無線綴じより、さらに厚みのある冊子類、ページ数にすると数百ページくらいの冊子類などを作る場合によく選択されます。

具体的なあじろ綴じの方法は、無線綴じ同様背に接着剤を付けるのですが、背の部分に細かく切れ込みを入れることで、接着剤を通常の無線綴じより深く染み込ませます。そのため強度は通常の無線綴じより高くなりますが、接着力が強くなることによって、無線綴じよりもページが開きにくくなる点がデメリットになります。

PUR製本(ぴーゆーあーるせいほん)s

【PUR製本】もまた、無線綴じと同じカテゴリの綴じ方になります。PUR製本は、通常の無線綴じよりもページを開きやすくできる綴じ方です。例えば、見開きのデザインや写真がある冊子類やページ数の多い冊子類でも読みやすくなります。

PUR製本が無線綴じよりページが開きやすくなるのは使用する接着剤の違いによるものです。PUR綴じの接着部分には、接着の強度が非常に高い「PUR系ホットメルト接着剤」という接着剤が使われます。ちなみにPURは『PolyUrethaneReactive(ポリウレタンリアクティブ)』の略です。

PUR系ホットメルト接着剤は接着強度に優れ、通常の無線綴じに使われるタイプの接着剤と比較すると、2倍以上の強度があると言われています。また高い強度を誇りながら、綴じた部分の柔軟性も高く、ページがよく開くのが大きな特徴です。

また、PUR系ホットメルト接着剤は環境面でも優れています。従来の接着剤は不純物に分類されるもので、古紙をリサイクルする際の障害となるのですが、PUR系ホットメルト接着剤は古紙の回収、リサイクル時にパルプと100%分離できるようになっています。

コスト面や製本の作業性に課題が残されており、現在のところ高い普及率には至っていないのが惜しまれるところです。

他にもまだある!印刷物の綴じ方いろいろ

ここまでは、特に冊子類などでよく使われる綴じ方についてご紹介してきました。印刷物の綴じ方は他にもいろいろあります。全部はご紹介できませんが、比較的よく使われる綴じ方を一挙ご紹介していきます。

天糊製本(てんのりせいほん)

冊子の「天(上)」の部分を接着剤だけで留める製本方法です。接着剤を使ってページを固定する点では中綴じと同じなのですが、天糊製本は中綴じや無線綴じとは異なり、綴じた接着面から「紙を1枚ずつ剥がすことができる」点が大きな違いであり、特長です。
天糊製本が使われている印刷物は非常に多く、特に主要な用途としては、単票の冊子、複写式の伝票、便箋、メモ帳などを作る際によく使われます。

ツインリング製本

【ツインリング製本】は、リングを用いた製本方法です。綴じる部分に穴を開け、リングを通すことで紙を綴じます。また派生系として【スパイラル製本】と呼ばれる、ワイヤーをノドの穴に螺旋状に通す製本方法もあります。よく使われるのはノートやカレンダーなどです。一度は見たことがあるのではないでしょうか。

ツインリング製本の大きな特徴は、中綴じや無線綴じなどでは不可能な「360度の開閉」が可能になる点です。ページを開かずに折りたたんで使うことができるため、狭いスペースでも使いやすく、スペースを有効に使うことができます。

クロス巻き・マーブル巻き

クロス巻きは主に、伝票やメモ帳などの製本に使われます。強度が高いため、何度も開いたり閉じたりする書籍や論文などの製本加工に向いています。また、同様の製本加工で数種類の色が練り込まれたような柄の紙を巻いたものをマーブル巻きといいます。クロス巻き非常に似ており、背に貼るのが紙か布かの違いです。使用頻度が高くすぐに消耗する伝票やメモ帳はマーブル巻き、重要な伝票や冊子の製本にはクロス巻きなど、用途に分けて使われています。

製法方法とは別の綴じ方「左綴じ」と「右綴じ」

右綴じと左綴じの違い

これまでは綴じ方として「製本方法」をご紹介してきました。綴じ方には別の綴じ方もあります。それは「右綴じ」と「左綴じ」です。簡単にいうと、左綴じは冊子の左側を閉じるので「右開き」に、右綴じは冊子の右側を綴じますので「左開き」になります。

右綴じと左綴じどちらの綴じ方向にするのかは、本文が「縦書き」か「横書き」かが判断基準になります。代表的なもので、学校で使う教科書をイメージしてください。国語の教科書は「右閉じ」でしたし、数学や英語の教科書は「左閉じ」だったはずです。右綴じ・左綴じは、読者が本文を読む時の目線の流れや文字を読む方向を考慮しているもので、本文が縦書きの場合は右綴じ、本文が横書きの場合は左綴じになります。

もう少し例を挙げますと、新聞や雑誌、週刊誌などは、写真・イラスト・広告などの「カコミ」などさまざまな要素が入っていますが、本文は縦書きです。文章の書き出しが紙面の右上から始まり、左下に向かって読み進めていきます。つまりこの場合、本文が縦書きなので右綴じになるのが一般的です。

中にはコラムや広告など横書きのカコミ記事、本文よりも表やグラフなどが多いページがあることもあります。その場合でも本文が縦書きであれば右綴じにすることが多くなります。横書きのカコミ記事だけを目で追えば、読む方向は「左から右」となりますが、綴じ方向は「本文が縦書きか横書きか」で判断することが多くなります。

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